実は儲からない「テンプレートサイト」制作の現実

はじめに

ホームページを作りたいと思ったとき、最初に目にする選択肢の一つが「テンプレートサイト」です。聞こえはとても魅力的。「安い」「早い」「簡単」と三拍子そろったサービスのように見えます。しかし、その裏には多くの落とし穴が潜んでいることをご存じでしょうか?

この記事では、テンプレートサイトの実情と、それを取り巻くビジネス構造、実際に得られる成果、さらには制作側の利益構造まで踏み込みながら、「なぜテンプレートサイトは儲からないのか?」という現実を掘り下げていきます。中小企業経営者、個人事業主、フリーランスの方が、ホームページ制作を検討する際に、選択肢を見誤らないための視点を提供できれば幸いです。

テンプレートサイトとは?

テンプレートサイトとは、あらかじめ用意されたデザインやレイアウト(=テンプレート)をもとに、画像やテキストを差し替えるだけで完成するタイプのホームページのことです。

■ 主な特徴

  • 制作費用が安価(数万円〜10万円未満)
  • 制作期間が短い(数日〜1週間程度)
  • 専門知識が不要で誰でも簡単に編集できる

Wix、Jimdo、ペライチ、WordPressのテーマカスタムなど、様々なサービスがありますが、共通するのは「構築のベースが決まっている」という点です。

なぜテンプレートサイトが人気なのか?

■ 価格面での魅力

中小企業や個人事業主にとって、まずネックになるのは制作費用です。テンプレートサイトはそのコストを大幅に下げてくれます。外注せず自分で作ることもできるため、初期費用をかけたくない人にとっては魅力的です。

■ スピード重視のニーズ

立ち上げを急いでいるビジネス、例えばイベント開催、新商品の発表、SNS広告と連携したランディングページなどにもマッチします。

テンプレートサイトの限界

■ 限界1:デザインの自由度が低い

テンプレートは基本的に「枠の中で作る」もの。カスタマイズしようと思うと、HTMLやCSSの知識が必要になり、結果として「自分でできない」壁にぶつかります。

■ 限界2:検索エンジン対策(SEO)の非対応

SEOとは、Googleなどの検索エンジンで上位表示を狙うための対策ですが、テンプレートサイトでは自由に内部構造を編集できないため、SEOの施策が制限されます。

例えば、metaタグや構造化データ、ページ表示速度の最適化など、細かいチューニングができず、結果として「検索されないサイト」になりがちです。

■ 限界3:同じようなサイトが大量に存在

テンプレートは他のユーザーも同じものを使っている可能性が高く、「個性」が出にくくなります。結果として、「見たことあるサイトだな」「どこかで見たような気がする」という印象を持たれやすく、ブランディングにマイナスの影響を与えることも。

制作側から見た「儲からない」現実

テンプレートサイトはクライアントにとっては安く済みますが、制作側にとっては「時間単価の低い仕事」です。数万円の案件でも、打ち合わせや修正対応、サポートを含めると10時間以上かかることも少なくありません。

■ 利益構造の問題

1件5万円のテンプレート案件を月10件こなしても、売上は50万円。ここから人件費、広告費、サーバー管理費、消費税などが引かれると、実質の利益はかなり低くなります。

■ 消耗戦に突入するビジネスモデル

価格競争が激しくなり、似たような業者が乱立。「安い」「早い」だけが評価基準になり、サービスの質や提案力よりも価格に左右されやすい市場になります。結果、制作者側もモチベーションを保ちづらくなり、優れたクリエイターほどこの業界から離れていく傾向があります。

本当に安く済んでいるのか?という視点

■ 自分で更新できる=本当にラク?

テンプレートサイトでは「誰でも更新できる」と謳われていますが、実際には操作方法の習得や画像の最適化、文章の編集など、地味に時間がかかります。外注するならその分の費用が発生しますし、自分で行うなら「その時間は本業の売上に貢献しているのか?」という視点も必要です。

■ 機会損失の可能性

見栄えがイマイチだったり、検索されにくいサイトを使い続けることで、せっかくの見込み顧客を逃しているかもしれません。これは明確な「損失」です。

目的と手段を履き違えない

ホームページを作る目的は何でしょうか?

  • 新規顧客を獲得する
  • 信用を得る
  • 問い合わせを増やす

これらを実現するためには、ただ「形だけあるサイト」では難しいのです。目的達成のためには、それに合った設計や運用、改善が必要になります。

テンプレートが有効なケースもある

すべてのテンプレートサイトが悪というわけではありません。以下のような場合はテンプレートサイトも有効です:

  • 期間限定のキャンペーンページ
  • 補助金や助成金を活用するための仮サイト
  • SNS連携型のプロモーションページ
  • ブログやポートフォリオの簡易公開

つまり、「使いどころ」を間違えなければ、テンプレートサイトは有効なツールになり得ます。

まとめ:コストより価値で判断する時代へ

「安さ」や「早さ」だけを追求すると、結果として遠回りになることがあります。ホームページは一度作って終わりではなく、「育てていく」ものです。

テンプレートサイトの持つ利点と限界を理解した上で、本当に自分のビジネスに合った選択をすることが、遠回りに見えて実は一番の近道かもしれません。

長い目で見たときに、何を残せるか。何を投資として考えるべきか。それこそが、これからの時代のホームページ制作に求められる視点です。