士業の顧客インタビューをコンテンツ化する方法

どの業種でも同じかもしれませんが、特に士業の方にとって「情報発信」は難題です。

弁護士、税理士、司法書士、社労士…。専門性が高く、依頼者との信頼関係が重要視される職業であるからこそ、慎重になりすぎてしまう部分があるのではないでしょうか。

ブログやホームページで情報を発信しようと考えたとき、「何を書けばいいかわからない」「そもそも誰のために書くのか」「内容が堅すぎて誰にも読まれないのでは」と、手が止まってしまうことも多いかと思います。

そこで今回は「顧客インタビューを活用して、自然に信頼感を高め、専門性を伝えられるコンテンツ化の方法」について掘り下げてみたいと思います。

「顧客の声」は最強のコンテンツ

あなたがインターネットで何かのサービスを探しているとしましょう。たとえば「相続に強い司法書士」や「税務調査に対応できる税理士」と検索したとき、いくつものサイトが表示されます。

どれもそれなりに整ったデザインで、「当事務所は信頼と実績があります」といった文言が並びます。しかし、それらがすべて他人事のように感じられ、なかなか「この人に相談してみよう」とは思えない…。

そんな中、ある事務所のページには「実際に相続の相談をしたAさんのインタビュー」という記事がありました。顔は見えないけれど、年齢や状況、どんなことで困っていたのか、どんな提案を受けてどう感じたか…。読み進めるうちに、まるで自分のことのように思えてくる。

──この時点で、もう他の事務所のサイトは頭から消えています。

顧客インタビューとは、それほど強力な「伝える力」を持っているコンテンツなのです。

なぜ顧客インタビューなのか?

士業のサービスは、非常に個別性が高く、言ってしまえば「体験してみなければわからない」ことが多くあります。治療を受ける病院や美容院と似ています。「説明」より「体験談」のほうが、伝わるのです。

顧客インタビューには、以下のようなメリットがあります。

  • 専門性を自然に伝えられる
  • 安心感・信頼感を醸成できる
  • SEO(検索エンジン対策)にも強い
  • 継続的なコンテンツ源になる

実際にどんなインタビューをすればいいのか?

顧客インタビューというと、雑誌の巻末対談のようなイメージを持つかもしれませんが、そんなに大げさなものではありません。むしろ、日常の延長で行うくらいがちょうど良いです。

質問例

  • 相談される前は、どんなことで困っていましたか?
  • どんな経緯でこの事務所に相談しようと思いましたか?
  • 実際に相談して、どんな対応を受けましたか?
  • 相談前と比べて、気持ちや状況はどう変わりましたか?
  • 同じように悩んでいる方がいたら、何を伝えたいですか?

重要なのは、「成功談」を引き出すことではありません。「その人がどんな想いで依頼したか」「その後どう感じたか」という物語にフォーカスすることです。

文章化する時のコツ

  1. 会話形式は親しみやすい
  2. たとえば以下のように、

    Aさん: 最初は「こんなこと聞いていいのかな」と思って不安だったんですけど…

    税理士先生: そうおっしゃる方、多いですね。専門的なことって、なかなか聞きづらいですよね。

    このように会話形式でまとめることで、文字の圧を減らし、読みやすくなります。

  3. 顔写真がなくてもOK、でもイメージ画像はあった方が良い
  4. インタビュー掲載時に顔写真を載せることに抵抗がある方は少なくありません。しかし、イメージ写真(年齢層に近い人物の後ろ姿や、相談風景のイラストなど)を使うだけでも印象は大きく変わります。

  5. 「共感できる言葉」を拾う
  6. 「先生に会って、ホッとしました」

    「どんなことでも話せる安心感がありました」

    こういった感情のこもった一言が、読み手にとっての最大のメッセージになります。

実際にコンテンツ化する方法

  • ブログにまとめる
    「事例紹介」としてカテゴリ化するのがおすすめです。個別記事で顧客インタビューを掲載していくことで、検索エンジンからもアクセスされやすくなります。
  • パンフレットや事務所案内に活用
    インタビューを簡易的にまとめて、事務所紹介パンフレットに入れるのも効果的。これだけで、他の士業事務所と圧倒的に差別化できます。
  • 動画化する(ハードルが低い方法)
    「動画」といっても顔出しや編集が必要なわけではありません。音声インタビューをもとに、文字とイラストだけで構成したスライド動画でも十分です。YouTubeやInstagram、Facebookに投稿することで、より多くの人に届きやすくなります。

プライバシーと配慮

顧客インタビューをコンテンツ化するうえで最も重要なのは「個人情報の扱い」と「許可」です。以下の点を必ず守りましょう。

  • 実名は原則避ける(仮名やイニシャルで)
  • 年齢、居住地、家族構成などは本人が了承した範囲のみ記載
  • 掲載前に原稿を確認してもらい、明確な同意を得る
  • 万が一の取り下げ要請にも迅速に対応できるよう体制を整える

コンテンツは“あなたの視点”で価値が生まれる

最後に。顧客インタビューは、ただ「インタビューしたから」価値が生まれるのではありません。

  • 「どんな視点でまとめたか」
  • 「誰に届けたいと思ったか」
  • 「どんな想いで書いたか」

この“あなたの視点”が、他のどんな情報サイトにもない価値になります。

検索上位にあるサイト、企業が作る大規模なポータルサイト…。そういったものに対抗するには、“個”の視点が最も強い武器です。

「誰かの役に立つ情報を、自分の言葉で伝える」
それは同時に、自分自身が情報を深く理解し、整理する時間にもなります。

おわりに

顧客インタビューを通じて、自分自身の仕事を客観視し、また第三者にも伝える力を磨いていく──。その積み重ねが、士業としての信頼を生み、問い合わせが「自然に」増えていく基盤になります。

もし「ブログに何を書いていいかわからない」と感じたら、自分の顧客との会話の中から、ヒントを探してみてください。それはきっと、あなた自身が“読みたかった記事”でもあるはずです。

そして、同じ悩みを持つ誰かにとっての、かけがえのない情報になるかもしれません。