精度より量に賭けろ!分母ファーストが生み出すマーケティングの勝ち筋

集客が上手くいかない、問い合わせが増えない。

そんな悩みを持つ士業の方に、ぜひ一度立ち止まって考えてほしい視点がある。それが、「分子ではなく分母に集中する」というマーケティング戦略の基本的な考え方だ。

分子とは何か?分母とは何か?

まず、分子・分母という言葉の意味を明確にしよう。

たとえば、ホームページからの問い合わせ数を考えたとき、次のような式で成り立つ。

問い合わせ数 = アクセス数(分母) × 成約率(分子)

この場合、成約率を上げる施策(キャッチコピーの見直し、CTAボタンの色、料金表の整備など)が“分子の改善”であり、アクセス数を増やす施策(SEO、広告、SNSなど)が“分母の改善”になる。

多くの士業の方が、真っ先に考えるのが「成約率を上げるにはどうしたら良いか?」だ。つまり、分子に集中してしまう。しかし、これが落とし穴であり、限界のある取り組みだということに気づいていない人が多い。

分子にこだわる危険性

成約率の改善には、確かに意味がある。しかし、それは一定のアクセス数があって初めて価値がある取り組みだ。もともとのアクセスが月に30件程度しかないホームページで、成約率を1%から3%に上げたとしても、月に1件の問い合わせが3件になるだけだ。

一方、アクセス数を30件から300件に増やすだけで、成約率が1%のままでも月に3件の問い合わせになる。仮に成約率を維持したままアクセスが1000件になれば、それだけで10件の問い合わせが見込める。つまり、分母の改善は「掛け算の土台」を広げる行為なのだ。

分子の改善は、ミリ単位の微調整。分母の改善は、メートル単位の増幅。この違いをまず理解しよう。

士業における分母改善の具体策

1. SEO対策(検索エンジン最適化)

Google検索において、自分の名前や事務所名ではなく、「地域名+業務名」で上位に表示されることが重要だ。

例:「横浜 相続相談 弁護士」「渋谷 労務管理 社労士」など。

ここで重要なのは、検索する人の“悩み”に合わせたキーワードを意識することだ。「行政書士 業務内容」よりも「建設業許可申請 大阪 行政書士」のほうが、依頼意欲の高いユーザーを集められる。

2. Googleビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)の活用

地図検索からの流入は無視できない。登録だけして放置ではなく、投稿や写真の更新、口コミの獲得など、積極的な運用が成果を左右する。

この運用こそが「分母を育てる」王道だ。

3. 専門記事型ブログの継続

多くの士業ホームページが「事務所紹介」「業務案内」だけで終わっている。しかし、ユーザーが知りたいのは、「自分の悩みが解決するか?」という情報だ。

実際に「家族信託とは?」「役員報酬を下げるデメリット」など、専門知識を解説したブログは、検索され続け、分母として機能する。

さらに、このブログ記事をSNSで再拡散することで、流入の入り口を増やすこともできる。

4. YouTube・音声コンテンツ

動画や音声による発信は、文章だけでは届けられない層へのアプローチが可能だ。難しい内容でも、語り口や表情を通じて“安心感”を伝えられるという点で、成約率の改善にも貢献する。だがそれ以前に、動画は検索対象になる=分母を拡張するという視点で捉えるべきだ。

5. 広告活用(ディスプレイ広告、検索広告)

自然検索(SEO)だけでは競争が激しいジャンルでは埋もれてしまう。広告は「お金で分母を買う」行為であり、短期的にアクセスを爆増させたいときには非常に有効だ。

ただし、広告で得たアクセスも、受け皿となるコンテンツ(記事やランディングページ)がなければ、意味のない数値になってしまう。広告とコンテンツの両輪で分母を整えていく視点が求められる。

分子を捨てろ、ではなく“今は捨てろ”

ここで一つ、誤解のないように補足しておこう。

「分子を捨てろ」というのは、あくまでも優先順位の話だ。最初から成約率にこだわりすぎて、分母の育成を怠っているケースが多すぎるのだ。

アクセスが1000件を超えてきた段階で、次に着手すべきはもちろん分子だ。ABテストや導線改善、フォーム最適化など、成約率アップのノウハウも有効になる。

だが、ゼロに何を掛けてもゼロ。まずは、掛け算のベースとなる「分母の拡張」に全力を注ぐことが、士業マーケティングの初期段階では絶対に必要な戦略だ。

成果を生む人は、常に“入り口”を増やしている

マーケティングが上手な士業の方は、例外なく“入り口の数”に敏感だ。

  • 検索から入ってくる人
  • SNSの投稿から興味を持った人
  • YouTubeを見て信頼した人
  • 紹介されたリンクから来た人
  • 広告バナーをクリックした人

こうした入り口を多重的に設けておけば、一つのチャネルが落ちても、他のチャネルが支えてくれる。逆に、単一の流入経路(紹介、SEOだけ)に依存している状態では、環境変化に非常に弱い。

「入り口=分母」である。

最後に:士業ホームページは“案内板”ではない

ホームページを“名刺代わり”と考えている人がいる。しかし、それでは問い合わせに繋がらない。

ホームページは「24時間営業の営業マン」であり、分母を増やし続ける自動化ツールでもある。そこに価値を見出し、どう設計するかが成果に直結する。

分子に時間を費やす前に、自分の分母は十分か?問い直してみることから始めてほしい。