「選ばれない理由」をなくすコンテンツマーケティング
士業の方々がホームページを持つ目的は、単なる名刺代わりではありません。信頼を得ること、専門性を伝えること、そして最終的には「選ばれること」が目的であるはずです。しかし、実際には「選ばれない理由」に無自覚なままホームページを運用しているケースが多く見受けられます。
その「選ばれない理由」を丁寧に取り除き、着実に信頼を育てていくために有効なのが、コンテンツマーケティングです。これは単なるブログの更新ではなく、戦略的に情報を設計・発信していく営みです。この記事では、士業が今すぐ取り入れるべきコンテンツマーケティングの考え方と具体的な取り組み方について掘り下げていきます。
「選ばれない理由」はどこにあるのか
士業のホームページを分析していると、意外にも「選ばれない理由」は本人の専門性や実績ではないことが多いのです。よくあるのが次のような例です:
- 情報が薄い・少ない:サービス内容の説明が簡素すぎて、依頼者の不安を解消できない
- 自分語りが多すぎる:「資格取得のきっかけ」や「理念」ばかりで、読者の疑問に答えていない
- 実績が見えにくい:「年間○件対応」など抽象的な数字のみで、実態が伝わらない
- 差別化できていない:「親身になって対応します」「地域密着」など、誰もが言いがちなコピーばかり
つまり、訪問者の「知りたいこと」と、発信者の「言いたいこと」がズレているのです。このズレを修正し、選ばれない理由を丁寧に潰していく。それが、コンテンツマーケティングの基本です。
コンテンツマーケティングとは?
「コンテンツマーケティング(Content Marketing)」とは、見込み客にとって価値のある情報(=コンテンツ)を継続的に発信することで、信頼を築き、最終的にサービスの選定候補に入ることを目指すマーケティング手法です。
たとえば、ある司法書士が「不動産登記でよくあるトラブルとその予防策」という記事を定期的に書くとしましょう。それを読んだ読者は、
- この人は詳しそうだ
- トラブルに備えた考え方がある
- 安心して依頼できそうだ
という印象を持ちます。すぐには依頼が発生しなくても、将来的な候補に入る確率が高まります。
なぜ士業こそコンテンツマーケティングが必要なのか
士業のサービスは、「困ってから探す」「信頼できる人に頼みたい」と思われがちです。そのため、広告や派手な営業活動が向かない分野です。むしろ、
- 丁寧な解説
- 専門用語をかみ砕いた説明
- 実際の事例をもとにしたアドバイス
といった「信頼される情報提供」が鍵を握ります。さらに、士業の世界は他との差別化が難しいため、
誰が発信しているか=専門性と人格を伝えることが極めて重要です。これはホームページ上の静的なプロフィールでは不十分で、継続的に情報発信をする中でしか醸成されません。
どんなコンテンツを発信すればいいのか
選ばれない理由を潰すには、読者が「何に不安を抱えているのか」を理解する必要があります。以下のようなジャンルは、士業にとって有効なコンテンツテーマになります:
- 初心者向け解説記事
例:「相続登記って何?やらないとどうなる?」
※専門用語は都度、簡単な言葉で解説を入れましょう。 - 実際の相談事例(仮名・加工したもの)
例:「実際にあった相続トラブルと解決までの流れ」
※プライバシー配慮が前提ですが、具体性は信頼に直結します。 - 法改正・制度変更の影響
例:「2024年の改正による相続人の範囲変更と注意点」
※タイムリーな話題は、検索エンジンにも評価されやすくなります。 - よくある質問への回答
例:「顧問契約って途中解約できる?」
※FAQ形式でまとめることで、ホームページの滞在時間も向上します。
記事の書き方にも「信頼」は現れる
- 結論を先に書く:読者は忙しい。まず答えを示すこと。
- 一文を短くする:専門性より、可読性が大事。
- 箇条書きを活用する:情報整理されている印象を与える。
- 感情を込めすぎない:熱意は大事だが、冷静で論理的なトーンが好まれます。
SEOだけが目的ではない
「記事を書いても検索上位に出なければ意味がない」と思われがちですが、それは半分正解で半分間違いです。
記事は、「探してたどり着く人」に加え、「一度ホームページに来た人が、さらに信頼を深めるために読む」こともあります。つまり、SEO(検索エンジン最適化)だけでなく、
- 滞在時間の延長
- 離脱率の低下
- 信頼感の積み上げ
といった副次的な効果も大きいのです。また、書き溜めたコンテンツは、将来的には再編集・再利用も可能です。資産として残るという点で、広告よりも長期的に効き続けるという利点があります。
継続することが最大の差別化
コンテンツマーケティングは「一発逆転」の手段ではありません。地道な更新と改善を重ねることで、他の士業との差別化が進みます。
- 「この人の記事、よく見かけるな」
- 「またこの人のブログを読みに来た」
そんな印象が蓄積されていけば、Googleの評価も、読者の評価も、着実に上がっていきます。
まとめ:選ばれるためには、「選ばれない理由」を消していく
士業のホームページで問われるのは、「自分のサービスを魅力的に見せる」ことではなく、「相手の不安を減らす」ことです。コンテンツマーケティングは、そのための最も地道で、最も確実な方法です。
選ばれない理由を丁寧に潰していけば、自ずと選ばれる機会は増えていくでしょう。
そしてその過程で生まれた記事群は、士業にとっての財産となり、10年後も読まれ続ける資産となり得ます。
士業の信頼は一朝一夕で築けるものではありません。だからこそ、時間をかけて、誠実に向き合う価値があるのです。