税理士サイトで“数字の話”をエンタメにする方法
「数字」は得意な人には武器であり、苦手な人には敵。
そして、税理士という職業は、その「数字」を生業にしている人たちです。
とはいえ、「数字の話」は退屈で難しいと敬遠されがち。
にもかかわらず、SNSやYouTube、noteなどで見かける税理士アカウントの中には、「数字なのに面白い」「経理の話なのに感動した」「節税なのにエンタメ」——そんな不思議な“共感の渦”を巻き起こしている存在があります。
では、どうすれば税理士や会計士のホームページにおいて、堅く見られがちな「数字の話」を、親しみやすく、読まれるコンテンツとして届けられるのでしょうか。この記事では、数字をエンタメに変えるための考え方や工夫、実際の事例に至るまでを、現実的な視点から掘り下げてみたいと思います。
1. 「数字」は感情に置き換えると動き出す
会計や税務における数字は冷静で正確で、しかも淡々としています。
ですが、その裏には必ず「感情」があります。
たとえば、年間の利益が前年比プラス20%になったという事実。
それだけ見ると「へぇ、伸びたんだ」で終わってしまいます。
しかし、そこに「節税対策を初めて真剣に実践した結果」「在庫の持ちすぎを見直してキャッシュフローが改善した」という背景やストーリーがあれば、ぐっと引き込まれるのです。
数字に“人間の動き”を添えると、それは物語になります。
税理士サイトでも、ただの統計データや事例紹介で終わらせず、背景や“動機”を意識すると、一気に読み物としての深みが生まれます。
2. 成功・失敗事例を「ドラマ」にする
税理士の現場には、大小さまざまな“事件”が転がっています。
それは決算書の行間に隠された「ドラマ」とも言えます。
- 起業1年目、経費感覚がわからず赤字転落したスタートアップ
- 税務調査で涙をのんだフリーランス
- 節税を知っていたら買えたはずの自宅
こうした実話ベースの話は、読者にとって非常に“引き”が強いコンテンツです。
それが必ずしも成功話である必要はありません。むしろ、失敗談にこそ人は惹きつけられます。
ポイントは、「主人公(=依頼者)」の視点で描くこと。
数字を語るとき、主語を「我々専門家」ではなく、「その人」に置くことで、感情が宿ります。
それは、ホームページを読む人にとって「自分ごと」として受け入れられやすくなるという大きな利点を持っています。
3. “ビジュアルで魅せる”数字の力
視覚は最も強力な情報取得手段です。
数字の羅列より、グラフや図解のほうが圧倒的に伝わります。
最近では、インフォグラフィックを上手に活用している士業サイトも増えてきました。
たとえば、
- 「会社設立1年目の節税額比較」
- 「業種別にみる仕入率の平均値」
- 「副業が本業を越えるまでの3年間の推移」
これらを棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなどでわかりやすく見せると、数字にストーリーが生まれ、しかも頭に残りやすくなります。
特に、税理士が提供できる数字情報は、膨大で多彩です。
ただし、気をつけるべき点はひとつ。
「エンタメ化」と「軽薄化」は違うということ。
視覚表現は分かりやすさを高めるための手段であって、内容を薄めるためのものではありません。
あくまでも伝えるべき“芯”を太く保ちながら、見せ方に工夫することが重要です。
4. “あの税金”をネタにする
数字をエンタメに変える代表的な題材が「税金」です。
その中でも、以下のようなテーマは特に親しみやすく、読者の関心を惹きつけやすいです。
- 「宝くじに当たったら税金は?」
- 「不倫慰謝料に税金はかかるのか?」
- 「フリーランスがカフェで仕事すると、コーヒー代は経費になるのか?」
- 「“子供名義の口座”は脱税か?」
こうした、いわゆる「生活密着型の税金話」はSNSでも非常に拡散されやすいですし、ホームページでも“よくある質問”や“コラム”として配置することで、専門性+親しみやすさを両立させることができます。
読者は「なるほど」と納得すると同時に、「ちょっと面白い」と感じられるテーマに対して、自然と滞在時間が伸びる傾向にあります。
数字の話でも、「生活」と接点があるだけで、“人ごと”から“自分ごと”に変わるのです。
5. 物語と数字を掛け合わせる「エモ×データ」戦略
マーケティング業界で使われる言葉に「エモ×データ」という考え方があります。
これは、「感情的共感(エモ)」と「信頼を支えるデータ(数字)」を組み合わせることで、より強い影響力をもたらすというもの。
税理士のホームページにおいても、実はこの手法は非常に有効です。
たとえば、
「夫婦でカフェを経営する40代夫婦。2年前は資金繰りに苦しんでいたが、会計を見直し“利益の見える化”を進めた結果、利益率が15%改善。今では従業員を2名雇用し、第二店舗を準備中。」
このように、エモーショナルな物語と具体的な数字がセットになることで、「信頼性」だけでなく「感情移入」も得られます。
ただ説明するのではなく、“一人の人生を通じて数字を語る”という手法は、あらゆる士業サイトに応用可能なアプローチです。
6. わからない言葉は「解説つき」で親しみやすく
数字を扱うと、どうしても専門用語が飛び出します。
「損金」「控除」「中小企業会計要領」「減価償却」……
それらを理解していることが前提になってしまうと、読者が一気に離れてしまうリスクがあります。
重要なのは、“注釈のある語り方”です。
たとえば、
「青色申告特別控除(※帳簿を正しくつけると、最大65万円の所得が減ったことにしてよい制度)を活用することで…」
このように、かっこ書きや脚注で初心者向けの“翻訳”を入れることで、知識に自信のない層にも安心して読んでもらえる設計になります。
士業のサイトでは「情報量の多さ=信頼性」と思いがちですが、本当に伝わってこその“専門性”です。
7. 動画や音声で「数字に声を与える」
税理士や会計士の多くがまだ手を出していないのが「音声」や「動画」です。
しかし、この領域こそ、数字に“命”を与える強力な武器になり得ます。
たとえば、1分間の“数字解説ボイス”。
画面に「今月の節税ワンポイント」と表示し、税理士が軽快にトークするだけでも、静的な情報から動的な情報に変わります。
さらに、数字の読み方そのものを「ストーリーテリング」にする手法もあります。
「今日は“経費率”の話をしましょう。例えばコーヒー1杯の仕入れに50円かかって、それを300円で売っているとしたら…」
このように、音声による語りは“脳内再生”されやすく、記憶にも残りやすいという研究結果もあります。
音声や動画を加えることで、数字の世界は文字だけでは到達できない“温度”を持ち始めるのです。
8. お金の話を「人生設計」とつなげる
「数字」と聞くと会計や税務の枠に収まりがちですが、実際はもっと広く、もっと深いテーマです。
たとえば、「老後資金」「住宅ローン」「教育資金」「相続」「資産運用」など。
数字の話を突き詰めていくと、やがてそれは「人生設計」や「家族の在り方」と結びついていきます。
つまり、単なるテクニカルな解説から、「価値観に触れる読み物」に昇華する可能性を秘めているのです。
そういった読み物を用意することで、ホームページの中に自然と“人の温度”が生まれます。
数字を語ることで、人生を語る。
税理士サイトが本来持っているその力を、今こそ見直す時期かもしれません。
最後に:数字を嫌われ者にしないために
数字は、感情がない。
でも、それを扱う人間は、感情のかたまりです。
税理士という職業の価値を、「数字の解釈」としてではなく、「数字をどう生きるか」として伝えることで、ホームページのあり方は大きく変わります。
読み手が「数字っておもしろいな」と思える。
そんな一文があるだけで、サイトの価値は何倍にも高まります。
“税理士=難しそう”のイメージを、“税理士=頼れそう”へ。
その第一歩は、「数字を語るあなたの言葉」にかかっています。