なぜ“点線”が使われないのか?プロが避ける理由

ホームページやチラシ、ポスターなど、さまざまなデザインに「点線」が使われているのを見かけたことはありませんか?
点線は昔から切り取り線や区切り線として身近にある存在ですが、実はプロのデザイナーや制作現場では「点線」を使うことを控える傾向にあります。

それはなぜでしょうか?

今回は「点線」が持つ意味や見た目の特徴、そしてプロがなぜ点線を避けるのかを、初心者にもわかりやすく解説します。

1. “点線”とは何か?

まずは「点線」がどんなものか確認しておきましょう。

点線とは、実線とは違い「点が並んでできている線」のことです。点と点の間に空白があるため、実線よりも軽やかで断続的な印象を与えます。

グラフィックの世界では、点線は英語で「dotted line(ドッティッド・ライン)」や「dashed line(ダッシュド・ライン)」と呼ばれます。

dotted line(ドッティッド・ライン):丸い点が連続した線。

dashed line(ダッシュド・ライン):短い線(ハイフン状)が連続した線。

この違いは少し専門的ですが、どちらも点線の一種であり、使い分けはデザインや用途によって変わります。

2. デザインの基本:線の種類が持つ意味と役割

デザインにおける「線」はただの装飾ではありません。情報の区切り、強調、誘導などさまざまな意味を持つ重要な要素です。

例えば、線の種類によってユーザーの目線を誘導したり、ページ内の情報を分かりやすく整理したりできます。

実線(solid line):しっかりした境界線、強調したい部分に使うことが多い。

点線(dotted/dashed line):やや弱めの区切りや補助的な線として使われることが多い。

これらの違いは「見た目の印象」や「ユーザーの理解」に直結します。

3. “点線”の見た目と印象

点線は視覚的に「断続的」「未完成」「仮のもの」という印象を持たれやすい線です。

例えば、チケットの切り取り線や書類のミシン目をイメージするとわかりやすいでしょう。
これらは「ここで切ってください」「これは正式な線ではありませんよ」というニュアンスを含んでいます。

このため点線は「補助的」「一時的」「仮の線」としての役割が強く、強調や信頼感を伝える線としては不向きです。

4. プロが点線を避ける理由① — 視認性と印象の問題

ではなぜプロは点線を避けるのか?

視認性の問題

点線は画面や印刷物のサイズ、解像度、背景色によって見え方が大きく変わります。

  • 小さいサイズやモバイル画面だと、点と点の間隔が詰まって「線」として認識されにくくなる。
  • 逆に大きすぎると間隔が目立ちすぎてバラバラに見え、まとまりが損なわれる。
  • 背景と同系色だと見えづらく、区切りがわかりにくい。

これらの視認性の低さは、ユーザーが画面の情報を正しく認識する妨げになります。

印象の問題

点線は「弱い線」「仮の線」「補助線」といったイメージがあるため、信頼感や強調したいポイントには適しません。

特に企業のホームページや商品ページでは、「信頼感」や「確かな情報」という印象が重要です。点線はこのイメージを薄めてしまうリスクがあります。

5. プロが点線を避ける理由② — UI・UXへの影響

ここで、少し専門用語の解説を。

UI(ユーザーインターフェース):ユーザーが操作する画面やボタンなどのこと。

UX(ユーザー体験):その操作を通してユーザーが感じる体験や満足度のこと。

ウェブサイトのデザインでは、UIとUXがとても重要視されます。

点線はウェブブラウザの標準動作として、「フォーカスリング」と呼ばれるキーボード操作時の選択箇所を示す点線枠として使われています。

そのため、無意味に点線を多用すると、ユーザーが「ここはクリックできるのか?」と誤解したり、混乱したりする可能性があります。

また、点線の線が弱いため、ボタンの境界線や区切りとしては視認性が悪く、ユーザーが迷いやすい状況を生み出します。

6. 実例で見る点線の問題点

実際に点線を使ったデザインで起きやすい問題をいくつか挙げてみます。

  • 区切りが不明瞭になる:例えば記事の段落や商品説明の区切りに点線を使うと、線が弱くて全体のまとまり感が失われることがあります。
  • 操作ミスの誘発:リンクやボタンの周囲に点線があると、ユーザーが「ここは操作可能な部分か?」と迷いやすくなります。
  • 印刷物でのズレやかすれ:印刷時に点線は途切れやかすれが起こりやすく、品質が落ちて見えることがあります。

こうした問題から、特にホームページや広告デザインの現場では点線の使用が敬遠されがちです。

7. 点線を使う場合の注意点と代替案

とはいえ、点線が全く使われないわけではありません。

点線を使う場合の注意点

  • 役割を限定する
    例えば「切り取り線」や「仮の案内線」のように用途を明確にし、ユーザーが誤解しないようにする。
  • 線の太さ・間隔を調整する
    画面や印刷物の特性に合わせて、点の大きさや間隔を適切に調整する。

代替案としておすすめの線

  • 薄い実線(ライトグレーなど)
    弱めの区切りには、細く薄い実線が点線より視認性と印象のバランスが良いです。
  • 影やグラデーションを使った線
    立体感を持たせたり柔らかさを出すことで、目に優しい区切りが作れます。
  • 色の使い分け
    線以外の要素で情報を区切る方法(余白、背景色の違いなど)も効果的です。

まとめ

点線は「補助的・仮の線」という意味合いを持ち、視認性や印象の面で実線に劣るため、プロのデザイナーは慎重に使っています。

特にホームページや広告のデザインでは、ユーザーが情報を正しく認識しやすい「実線」や「色・余白」を活用した区切りが推奨されます。

ただし、用途や役割を明確にした上で使うなら、点線も効果的なデザイン手法となります。

デザインは「伝えたいこと」を明確にして、それに最適な表現を選ぶことが大切。点線の特徴を理解して、上手に使い分けていきましょう。