自作デザインが“チラシっぽく”見える理由と回避策

はじめに

名刺、フライヤー、Webバナー、ホームページ……。ビジネスを始めると、「とりあえず自分で作ってみよう」と手を動かす場面が少なくありません。便利な無料ツールやテンプレートが普及した今、誰でも気軽にデザインにチャレンジできます。しかし、「なんとなく野暮ったい」「どうしても“チラシっぽい”印象が抜けない」と感じたことはありませんか?

この記事では、プロではない方が作る自作デザインが、なぜ“チラシっぽく”見えるのか。その原因と、どうすれば洗練された印象に近づけられるのかについて、体系的に解説していきます。

「チラシっぽいデザイン」とは?

まずは、「チラシっぽさ」とは何かを明確にしておきましょう。ここでの“チラシ”とは、ポスティングや新聞折込によく見られる、情報が詰め込まれた広告紙面のことを指します。具体的には以下のような特徴があります:

  • 色数が多く、目立つ色が多用されている
  • フォントの種類が多く、サイズや太字・斜体が混在
  • 情報が詰め込まれ、余白が少ない
  • 写真・アイコン・イラストが賑やかに配置されている
  • 「今だけ!」「限定!」「無料!」などの煽り文句

これらの要素が組み合わさると、「ごちゃついた」「安っぽい」「テンプレート感が強い」という印象を与えがちです。では、なぜこのような表現になりやすいのでしょうか?

自作デザインが“チラシっぽく”なる理由

1. 情報の「全部載せ」症候群

ビジネスを立ち上げたばかりの方に多いのが、「この商品にはこれだけの魅力がある」「このサービスの良さを全部伝えたい」という気持ちが先行し、結果的にすべての情報を詰め込んでしまうパターンです。

情報量が多すぎると、見る人にとっては「読む気になれない」ものになります。結果的に、訴求力が下がるだけでなく、視覚的にもチラシ感が強くなってしまいます。

2. 無料テンプレートへの過信

Canva(キャンバ)やAdobe Expressなど、デザイン初心者向けのツールは非常に便利ですが、それらには「使いやすさ」「万人受けする」ことを優先したテンプレートが多く用意されています。これらをそのまま使うと、どうしても画一的な印象になりがちです。

特に、無料で提供されているテンプレートは、色彩設計や余白設計がシンプルで、目的に対して緻密に構成されていないケースもあります。多くの人が使っているデザイン=目新しさがない、という点も“チラシ感”を助長します。

3. フォント設計のバラつき

「フォント(書体)」はデザインの印象を決める非常に重要な要素です。にもかかわらず、「とにかく目立てばOK」とばかりに、ゴシック体・明朝体・丸ゴシック・手書き風など、さまざまなフォントが混在してしまうケースがあります。

さらに、文字サイズや行間がバラバラだと、見た目にまとまりがなく、「安っぽい」印象に直結します。

4. 余白の軽視

初心者がやりがちなのが、「余白=無駄」と考えてしまうこと。空いているスペースをすべて埋めてしまうと、視線の流れが散漫になり、情報がどこにあるのかわからなくなります。

プロのデザイナーは、意図的に「余白を使う」ことで視線誘導を行い、伝えたい情報の優先度を整理しています。

5. 色の使いすぎ、目立ちすぎ

色を使いすぎると、それだけで印象がチープになります。特に「赤」「黄色」「水色」などのビビッドな色は、注意喚起として使われることが多いため、濫用すると“安売り感”や“チラシ感”が増幅します。

“チラシ感”を脱するためのデザイン改善策

1. 情報の整理:伝えたいことを一つに絞る

「すべてを伝える=伝わらない」という原則を理解することが重要です。誰に何を届けたいのかを明確にし、1枚のデザインでは一つのメッセージに絞るようにしましょう。

たとえば、「初回無料相談をアピールしたい」という場合は、それ以外の要素(スタッフ紹介や会社概要など)は別のページや資料に分けることを検討してください。

2. フォントは最大2種類まで

デザインに使うフォントは、できれば2種類に抑えましょう。見出し用(太め・大きめ)と本文用(読みやすい・標準的)に分けると、整った印象になります。

Google FontsやAdobe Fontsなどを利用すれば、商用利用可能で洗練されたフォントを使うことができます。

3. カラーパレットを事前に決める

デザインを始める前に、配色をあらかじめ決めておくと統一感が出ます。基本は「メインカラー」「サブカラー」「アクセントカラー」の3色程度に絞ると、落ち着いた印象になります。

無料で使える色設計ツール:

  • Adobe Color
  • Coolors

4. 余白を設計に取り入れる

「情報を詰め込まない」ことと同時に、「どこに余白を置くか」を意識してみてください。余白は“空白”ではなく、情報を引き立てる“演出”です。

特にWebデザインでは、スマートフォンでの視認性を高めるためにも余白設計が非常に重要です。

5. テンプレートは“素材”と考える

テンプレートはそのまま使うのではなく、「あくまで構成の参考」として使い、自分のビジネスに合わせてアレンジしましょう。色、フォント、アイコンなどを変えるだけで、“自分だけのデザイン”に近づけることができます。

まとめ:伝えることと見せることは別

デザインの目的は、単に「情報を載せること」ではありません。「誰に、何を、どう伝えるか」を視覚的に構築することです。

“チラシっぽさ”を脱却するためには、デザインの表面だけでなく、「伝え方の設計」に意識を向けることが必要です。初めてデザインに取り組む方であっても、いくつかの基本的なルールを知るだけで、グッと洗練された印象に近づけることができます。

「なんとなくダサい」を、「伝わるデザイン」に変える第一歩は、そう難しくありません。