なぜHTML/CSSだけでは今のWebは語れないのか

Webサイトの制作と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが「HTMLとCSS」ではないでしょうか。

確かにHTML(HyperText Markup Language)とCSS(Cascading Style Sheets)は、Webサイトの基礎を構成する重要な技術です。しかし、2020年代のWebの世界において、HTMLとCSSだけで完結するサイトはむしろ稀であり、実用的なWebサイトを構築するには、それ以上の技術的知見やツールが求められます。

この記事では、「なぜHTML/CSSだけでは今のWebは語れないのか」を、実例と共に分かりやすく解説していきます。Web制作の外注を検討している中小企業の経営者、個人事業主、フリーランスの方々にとっても、「どんなスキルやツールが現代のWebには必要なのか」を理解する手助けになるはずです。

1. HTMLとCSSの役割を正確に理解する

まず基本から確認しておきましょう。

HTML:Webページの「構造」を作る言語です。文章の見出し、段落、リンク、画像など、ページ上の要素を記述します。

CSS:HTMLで作られた構造に「デザイン」を与えるスタイルシート言語です。色やフォント、レイアウトなど、見た目を制御します。

つまり、HTMLとCSSは、建物でいうところの”骨組み”と”外観”にあたる部分。非常に重要ではありますが、これだけでは”住める建物”にはなりません。

2. JavaScriptが生み出すインタラクション(動き)

現代のWebサイトは、「動き」や「操作性」が求められます。例えば、以下のような機能は、すべてJavaScriptというプログラミング言語によって実現されています。

  • スマホでメニューがスライドして開く
  • 入力フォームのリアルタイムバリデーション(入力間違いの自動チェック)
  • ログイン・ログアウト処理
  • 検索機能の動作

JavaScriptは、Webページに“命”を吹き込む技術です。HTML/CSSがあっても、JavaScriptがなければ、多くのユーザー体験が不可能になります。

3. モバイルファーストとレスポンシブ対応

スマートフォンの普及により、WebサイトはPCだけでなくモバイル端末でも快適に表示される必要があります。この「モバイルファースト」や「レスポンシブデザイン」も、CSSだけでは不十分です。

実際には、以下のようなツールや技術と組み合わせる必要があります:

  • CSSフレームワーク(Bootstrap、Tailwind CSSなど):効率的にデザインを整えるためのツール群
  • メディアクエリ:デバイスの画面サイズに応じてデザインを切り替えるCSSの機能

ここでも設計力やデザイン面での配慮が求められ、単なるCSSの知識だけでは対応が難しくなってきます。

4. Webサイトは「データ」と連動している

たとえばECサイト(ネットショップ)や予約サイト、ブログなどを運営する場合、ただの静的なHTMLではなく、動的に情報を表示する必要があります。

これを実現するために登場するのが以下のような技術です:

  • バックエンド言語(PHP、Python、Rubyなど):サーバー側で動作し、データベースとの連携を行います。
  • データベース(MySQL、PostgreSQLなど):商品情報やユーザー情報などのデータを管理します。
  • CMS(Content Management System):WordPressなど、非エンジニアでも簡単にコンテンツ管理ができる仕組み。

つまり、Webサイトの裏側では膨大な「データ処理」が走っており、HTML/CSSではまったく太刀打ちできない領域です。

5. SEOや表示速度への配慮

Webサイトは見た目や操作性だけでなく、「検索される」「見つけられる」ことが重要です。この領域でも以下のような技術が必要です:

  • 構造化データ(JSON-LDなど):検索エンジンがページ内容を正しく理解するためのコード
  • 画像の最適化:表示速度を速め、ユーザーの離脱を防止するため
  • CDN(Content Delivery Network):世界中のユーザーに高速でページを届ける技術
  • LighthouseやPageSpeed Insightsの活用:Googleの提供するWebページ品質分析ツール

HTML/CSSでページを作っただけでは、SEO的に不十分であり、技術的な改善が必要になります。

6. セキュリティとプライバシー対応

現代のWebでは、セキュリティも非常に重要です。特に以下のような対策が求められます。

  • SSL対応(https://):通信を暗号化し、ユーザーの情報を守る
  • フォームのスパム対策(reCAPTCHAなど)
  • 個人情報保護(プライバシーポリシーの整備など)

これらも、HTML/CSSではカバーできず、外部サービスの連携やサーバーサイドの知識が必要になります。

7. Web制作における「チーム開発」と「ワークフロー」

HTML/CSSは、個人の作業にも向いていますが、複数人での制作や長期的な運用を考えると、より高度な管理体制が必要です。

  • Git:コードのバージョン管理を行うツール
  • SassやPostCSS:CSSを効率化するための拡張機能
  • 自動デプロイ(CI/CD):更新内容を自動的にサーバーへ反映させる仕組み

これらを活用することで、効率的かつ高品質なWeb開発が実現されているのです。

まとめ:HTML/CSSは”始まり”に過ぎない

HTMLとCSSはWeb制作の土台であり、不可欠な存在です。しかし、それだけで現代のニーズに応えられるWebサイトを作ることは、極めて難しいのが現実です。

動的な処理、データとの連携、スマホ対応、SEO、セキュリティ、表示速度の最適化……それぞれの課題に対して、適切な技術やツールを活用しなければ、”ただ存在するだけ”のサイトになってしまいます。

だからこそ、Web制作には総合的な知識とスキル、そして柔軟な視点が求められるのです。

これからWebサイトを持とうと考えている方も、今後の拡張性や維持管理を見越して、「HTMLとCSSだけでは足りない」という前提で、制作を検討することが望ましいでしょう。

この記事が、現代のWeb制作における技術的な背景や考え方を理解する一助になれば幸いです。