オフライン営業がゼロになる?“ブログ型営業法”とは

弁護士や税理士などの士業にとって、かつての営業スタイルといえば「紹介」が中心でした。人脈を介して信頼を得るという古典的な方法は、確かに有効です。しかし昨今、その方法だけでは限界が見えはじめています。特に若手の士業や、地方で開業したばかりの方、既存顧客に頼らず新規を開拓したい方にとって、「待ち」の姿勢では状況を打開できません。

そんな中で注目されているのが、“ブログ型営業法”と呼ばれる手法です。

そもそも“ブログ型営業法”とは何か?

“ブログ型営業法”とは、専門家自身がブログを通じて知識や経験を発信し、それを検索エンジン経由で見つけた読者が、最終的に依頼や問い合わせに至るという営業スタイルです。コンテンツマーケティングの一種であり、能動的な「アウトバウンド営業」とは対極に位置する「インバウンド営業」の一形態です。

言い換えれば、「見込み客が自然に寄ってくる仕組み」をブログによって作るということ。

この方法の優れている点は、売り込み感がないという点です。たとえばオフィスへの飛び込み営業や電話営業は、どうしても“売り込まれる”印象を相手に与えます。しかし、ブログ型営業は違います。読者は“自分の意志”で記事を読み、信頼し、問い合わせをするのです。

なぜ今、“ブログ型営業法”が注目されているのか

■ コロナ禍以降の営業環境の劇的変化

コロナ禍を境に、士業の営業スタイルに大きなパラダイムシフトが起こりました。オンラインセミナー、リモート相談、電子契約、クラウド会計、電子申請など、顧客接点の非対面化が進行。つまり、対面での信頼構築や営業訪問を前提とするスタイルが“時代遅れ”になりつつあるのです。

これにより、「自ら動かずとも信頼を得られる仕組み」が求められ、その最も有力な手段がブログ型営業法だという認識が広まってきました。

■ 士業の専門性と親和性の高さ

士業が扱うテーマは、一般の人にとって極めて難解です。相続税、労務トラブル、契約書の作成、在留資格……これらは専門家でなければ正確に解釈・対応できません。ゆえに、ブログという形で「翻訳」された知識が求められます。

つまり、士業がブログで発信する情報には、単なる文章以上の価値があるのです。それは、知識の“見える化”であり、読者にとっては「無料で読める専門相談」に等しいコンテンツとなります。

成果事例:実際に顧客を獲得しているブログたち

■ 事例①:外国人ビザ申請に特化した行政書士

「技人国ビザの更新方法」や「配偶者ビザの審査基準」といったピンポイントな記事を投稿し続けたところ、東京都・愛知県などからの依頼が急増。開業2年目にして、ブログ経由の問い合わせで月10件以上の新規案件を獲得。

■ 事例②:スタートアップ支援に強い税理士

ブログで「資本金と節税の関係」「社長が役員報酬をゼロにするリスク」といったテーマを解説。アクセス数は月間4万PVを超え、ブログを見た企業から定期顧問の依頼が発生。営業なしで売上の7割を占めるまでに。

ブログの始め方:技術よりも“姿勢”が重要

■ 1. ターゲット設定

誰に向けて書くのかを明確にしましょう。「起業を検討している30代男性」「親の相続で悩む50代女性」といった、できる限り具体的なペルソナを設定します。

■ 2. テーマの具体化

テーマは専門知識を噛み砕いた内容にしましょう。例:

  • 「労基署から是正勧告が来たらどうする?」(社労士)
  • 「成年後見人と任意後見人の違いとは?」(司法書士)
  • 「医療法人設立の税務メリットとは?」(税理士)

■ 3. 構成の型を決める

  • 読者の悩み
  • 背景や理由
  • 専門家視点での解説
  • 解決策や注意点
  • まとめ

この型を定めておくと、記事作成のハードルが下がります。

SEO対策=“読者満足度”の追求

SEO(検索エンジン最適化)は、Googleなどの検索結果で上位表示されるための取り組みです。

しかし裏技のようなテクニックではなく、「読者が満足するコンテンツ」を作れば、自ずと評価される時代になっています。

たとえば、

  • 専門用語には注釈をつける
  • 図解や表を用いて視覚的に伝える
  • 実例を交えて信頼性を上げる

こうした工夫が、検索上位と読者満足度の両方につながります。

書き続けることで“資産”が生まれる

ブログ記事は、公開して終わりではありません。半年後、1年後に検索されることもあります。とくに士業の扱うテーマは「急に困って検索する」ものが多く、記事の“陳腐化”もしにくいのが特徴です。

つまり、1記事1記事が、将来的に集客資産になるのです。

続けるコツ:AIの活用と仕組み化

執務の合間にブログを書くのは大変ですが、近年はAIツール(ChatGPTなど)を活用することで、下書きの作成や構成案の準備が可能です。これにより、1記事あたりの時間を大幅に短縮できます。

さらに、更新日をスケジュールに組み込む・毎回のフォーマットを固定することで「継続性」を担保できます。

ブログ型営業法の“未来”を見据えて

ブログ型営業法は、今後ますます主流になる可能性を秘めています。AIによる検索の進化、SNSとの連動、動画や音声コンテンツとの融合など、ブログは情報発信の中心としてさらに拡張されていくでしょう。

一方で、既に多くの士業が参入を始めている分野でもあり、差別化がますます重要になります。

  • 他人にはない専門領域を明確にする
  • 地域密着や業界特化を打ち出す
  • キャラクターや語り口で人間味を出す

こうした要素が、単なる情報提供を超えて「信頼される存在」へとつながっていきます。

最後に:営業が“苦手”な士業にこそ向いている

ブログ型営業法は、「営業が苦手」「売り込むのが苦手」「口下手」という士業の方にこそ向いています。なぜなら、書くことは“準備ができるコミュニケーション”だからです。

対面営業と違い、言葉を選び、事例を調べ、落ち着いて表現することができます。そして読者は、文章の中に“その人らしさ”を見出し、「この人なら安心」と判断してくれるのです。

だからこそ、これは単なる集客法ではありません。士業が自らの知識を未来へ資産として蓄積し、信頼という無形の財産を構築していくための、本質的な営みなのです。