顧問契約の心理的ハードルを下げる見せ方──士業が避けがちな「定期契約」の壁を越えるヒント
「顧問契約しませんか?」
士業にとって、この一言は意外にも“切り出しにくい言葉”だと言われています。
たとえ実績も信頼も十分であったとしても、「毎月定額で契約してください」と正面から提示することに、どこか抵抗を感じてしまう。特に、対面相談や単発の依頼を中心にしてきた士業ほど、顧問契約への心理的なハードルは高いままです。
そして、その心理的ハードルは士業側だけでなく、顧客側にも当然存在します。
「ずっと契約しないといけないの?」「月額費用に見合うだけのサポートが受けられるの?」といった漠然とした不安。そこをうまく乗り越えるためには、ただ「顧問契約あります」と書くだけでは不十分です。
本記事では、“顧問契約の心理的ハードルを下げるための見せ方”について深掘りしていきます。
特にホームページを活用して士業の顧問契約を提案したい方にとって、今後の施策のヒントになるはずです。
1. 「顧問」という言葉がもたらす重さと誤解
まず前提として押さえておきたいのが、「顧問契約」という言葉そのものが、依頼者にとって“心理的に重い”言葉だということです。
顧問=大企業が契約しているもの
顧問=高額で長期的な関係が前提
顧問=自分のような個人や小規模事業者には不要なもの
このような誤解が、依頼者側に根強くあります。
特に士業のホームページでよくあるのが、以下のような表現です。
月額3万円で顧問契約を承ります。税務相談・書類作成・訪問サポートあり。
これでは、「何を、どれくらい頼めて、どこまでが無料で、どこからが別料金か」が見えにくく、かえって契約をためらわせる原因になります。
2. 「頼れるパートナー」であることの言語化
顧問契約という言葉にこだわる必要はありません。
たとえば次のような言い換えや補足表現を取り入れるだけで、顧客にとっての「距離」がグッと縮まります。
「気軽に相談できる、月額のフォローサービス」
「いざというとき、すぐに動ける関係性」
「ビジネスのかかりつけ相談役」
「チャットでも電話でも、いつでも気軽に」
実際に、顧問契約の導入率が高い士業のホームページを見ると、「顧問」というワードは控えめで、「伴走」「継続サポート」「頼れる存在」といったキーワードを多用している傾向があります。
重要なのは、“定期契約”という形式ではなく、“安心できる存在”という概念を伝えることです。
3. 価格よりも「何が含まれるか」を徹底的に見せる
顧問契約を提案する際、どうしても月額料金に目が行きがちです。
しかし、ユーザーにとって重要なのは「その価格で何ができるか」。
たとえば、以下のように具体的な支援内容を明記することが、心理的負担を軽減させます。
月額1万円の顧問契約 含まれるサービス内容
- ✅ 月2回までのメール相談
- ✅ 申請書類のチェック対応
- ✅ 電話サポート(10分以内)
- ✅ 月1回の事業アドバイス
- ✅ トラブル発生時の初期対応
- ✅ 顧問契約者限定の優先対応
「○○円です」とだけ書かれていたものが、「これだけのことが含まれます」となるだけで、“安心材料”になります。価格に対する不安が“納得”に変わる瞬間です。
また、契約後に別料金が発生する場合は、逆に明確に記載しておく方が信頼度は上がります。
4. 「顧問契約前提」ではなく「相談の延長線」であることを見せる
ホームページの多くが、「顧問契約はこちら」→「問い合わせフォーム」と一直線です。
これは心理的ハードルを最大限高めてしまう導線です。
むしろ、
- まずはスポット相談 →
- その内容に対して定期フォローを提案 →
- 結果として顧問契約へ
という“段階設計”を見せた方が、自然な流れになります。
以下のような表現が有効です。
「まずは1回のご相談で十分です。その中で必要があれば、継続的なフォローもご提案いたします」
「初回相談後、必要な方には月額サポートをご案内しています」
このように、“顧問契約ありき”ではなく、“必要な人にだけ提案する”姿勢を見せることで、ユーザー側の警戒心が薄れていきます。
5. 「契約縛り」が不安を生む──柔軟性をアピール
顧問契約をためらう最大の理由のひとつは、「解約しづらそう」「やめられなかったらどうしよう」といった“契約縛り”への懸念です。
この壁を超えるためには、次のような「柔軟性」を伝える工夫が欠かせません。
- 契約は1ヶ月単位で解約OK
- 3ヶ月以内であれば全額返金保証
- 契約更新の都度、継続判断が可能
- 一時停止も対応可(育休や事業停止期間など)
柔軟な姿勢を打ち出すことで、「ダメならやめられる」「合わなければ戻れる」と感じさせられます。
これは、サブスクリプションサービスでもよく使われている戦略です。士業のサービスでも、こうした“サブスク型”の見せ方はどんどん取り入れる価値があります。
6. 「比較されないための差別化」が鍵になる
どの士業も、顧問契約のページでは大きく似通った構成になりがちです。
月額○○円のプラン
含まれる業務
フォームへのリンク
このような“横並び”では、ユーザーは結局「価格比較」でしか判断しなくなります。
それを避けるためには、次のような独自性を明示することが重要です。
- 業界特化型のサポート(たとえば「飲食店専門」「医療機関特化」など)
- トラブル発生時の即対応保証(連絡から24時間以内対応など)
- チャットツールでの相談対応(Slack・LINE WORKS・Chatworkなど)
また、士業本人のキャリアや人柄、支援実績をストーリーで紹介することで、“この人にお願いしたい”という感情面の後押しも可能になります。
7. 専門用語は「言い換え」+「補足」で恐怖を和らげる
顧問契約の説明ページにありがちなのが、専門用語の羅列です。たとえば、
顧問契約の範囲に含まれるのは、原則として法令上の相談業務および記帳代行・社保関連手続きまでとなります。
これは士業にとっては普通の文ですが、一般ユーザーから見ると“意味がよくわからず、怖い”文章です。
このような場合は、平易な言葉への言い換え+括弧付きの補足が効果的です。
例:
「事業に関わる法的なご相談(契約書チェック・トラブル時のアドバイスなど)や、記帳代行(会計帳簿の整理や入力作業)、社会保険関連の書類作成などが対象です」
このように伝え直すことで、“分かりにくさによる不安”を解消しやすくなります。
8. ホームページの導線も「契約」ではなく「安心感」重視へ
最後に、ホームページ全体での見せ方も見直してみましょう。
- 「顧問契約プラン」よりも「継続サポートのご案内」
- 「契約はこちら」よりも「お困りの方へ」
- 「料金表」よりも「サポート内容と目安費用」
すべての表現を「契約」中心から「安心」中心に変えるだけで、離脱率は大きく改善されることがあります。
また、実際に顧問契約をしている人の声(レビューや事例)を掲載することで、「他の人も契約している」という社会的証明が働き、信頼感が増します。
まとめ:顧問契約は「お願いするもの」ではなく「自然な選択肢」に
士業にとって、顧問契約は安定的な収益基盤を築くうえで非常に重要な柱です。
しかし、いきなり「毎月○○円で契約してください」という売り方では、見込み客にとっては“重たい選択肢”に映ってしまいます。
大切なのは、「気軽に相談できる存在」として見せていくこと。
そして、契約のハードルを“仕組み”と“言葉”で取り除いていくことです。
単に「顧問契約」と書くだけで終わらせず、その言葉の裏にある安心感・柔軟性・具体性を丁寧に伝えること。
その工夫一つひとつが、ホームページ上での成果を確実に引き上げていきます。