無名の司法書士が“顔出しゼロ”で指名されるまでにしたこと

顔出ししない決断には理由がある

「顔出しをしなければ、依頼なんて来ない。」

そんな言葉を、どこかで聞いたことはないでしょうか。特に士業の世界では、顔写真・プロフィール・経歴が揃っていて当たり前。個人の信頼こそが仕事を得るための第一歩と言われてきました。

ところが――ある無名の司法書士が、「顔出しゼロ」でありながらも、同業者に驚かれるほどの指名を得るようになったのです。

SNSにも登場せず、動画もなし。士業ポータルサイトにも登録していません。それでも依頼が来る。その秘密とは何だったのか?

この記事では、「顔を出さない」ことを選んだ一人の司法書士が、どのようにして無名から抜け出し、安定した指名を得るようになったのか――その戦略と工夫を、リアルなプロセスに沿って紐解いていきます。

名前よりも“テーマ”で覚えてもらう戦略

この司法書士が「顔出しゼロ」を貫いたのには、明確な理由がありました。

  • 前職との関係でプライバシーを守りたかった
  • 家族や知人に職業を知られたくなかった
  • 自分の見た目が「信用」に結びつくとは思えなかった
  • 何よりも、“顔”より“情報”を見てほしかった

こうした背景から、「顔を出すことで仕事を取る」という王道から、あえて距離を置くことになります。

では、顔を出さずに、どうやって“信用”を築いていったのか? 

答えは「文章」と「構成力」、そして「ホームページ」という、見えない武器の使い方にありました。

Googleは“顔”より“中身”を見る

この司法書士がまず取り組んだのが、「自分の名前ではなく、課題解決のテーマで検索される仕組み作り」でした。

たとえば、ただ「司法書士 ○○市」ではなく、

  • 「親の認知症で預金が凍結されたときに司法書士ができること」
  • 「未登記の実家の名義変更で苦労した話とその対処法」
  • 「兄弟で揉めないために“生前”にやるべき3つの準備」

といった、“リアルな困りごと”を解決する記事を、自身のホームページ上で定期的に公開していったのです。

彼の文章は、SEO対策におけるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を意識していました。

【解説】E-E-A-Tとは?

  • Experience(経験):実体験があるか
  • Expertise(専門性):その分野に詳しいか
  • Authoritativeness(権威性):情報発信者として信頼されているか
  • Trustworthiness(信頼性):安全で誠実な情報かどうか

つまり、「この人は顔は見えないけれど、実際に現場を知っていて、きちんと書けている」と検索エンジン側に“評価される”記事を積み重ねていったのです。

読者の“感情”を想定した構成

司法書士に限らず、士業にとってホームページは“名刺”であると同時に、“営業マン”にもなりえます。

この司法書士が公開したのは、「事例記事」だけではありません。

  • 実際の相談にあったFAQ
  • 一般の方が誤解している法律知識の整理
  • 他士業と連携する際の注意点
  • 相続・登記・遺言・成年後見の違いと使いどころ

など、まさに「知らなきゃ損する法律の話」を、初心者でも読めるように噛み砕いて書きました。

ポイントは「読みやすさと、共感の間」を意識したこと。

無機質な法律用語を多用するのではなく、実際の家庭や日常での困りごとを軸に、「この人は、ちゃんと私たちの話を聞いてくれる」と思ってもらえる文章に徹したのです。

無名でも“検索される存在”になった理由

ホームページ内の記事構成にも特徴がありました。

すべての記事が、

  • 共感(「あなたもこういうことで困っていませんか?」)
  • 理解(「実は、こういう背景があります」)
  • 解決(「この方法で、乗り越えることができました」)
  • 行動(「あなたも今すぐ準備できます」)

という、読者の感情の流れに寄り添った設計になっていたのです。

いわゆるストーリーテリング型ライティングですが、これを徹底したことが、無名でも印象に残る存在へと押し上げました。

1年、2年と記事をコツコツ積み重ねるうち、気づけばGoogle検索で上位表示される記事が増え、特定キーワードでのアクセスが安定的に入るようになりました。

【解説】ロングテール戦略とは?

検索ボリュームの少ないニッチなキーワードを多数狙って記事を量産する手法。競合が少なく、特定の困りごとにピンポイントで刺さるため、成約率が高いのが特徴。

顔出しもしない。SNSでもバズらない。それでも“検索される”ことで、定期的に問い合わせが入るようになったのです。

士業ホームページは、もはや“営業所”である

ある日、こんなメールが届きました。

「たまたま検索して、あなたの記事を読ませていただきました。
とてもわかりやすく、自分の状況と重なりました。
一度、相談させていただけませんか?」

まさに、理想的な形で“指名”された瞬間でした。

以降、メール→電話→初回面談という形で信頼が育ち、顔を出さずとも“選ばれる”存在になったのです。

現在、この司法書士のホームページは、単なる情報提供の場を超え、彼の“営業所”として機能しています。

  • 24時間、勝手に読まれ
  • 検索され
  • 興味を持たれ
  • 問い合わせされる

それも、広告を一切使わず、「地道な情報提供」だけで。

顔を出さないことに不安を感じる士業の方は多いかもしれません。ですが、実際は「顔を出すこと」よりも、「読み手の心をつかむ言葉を持っているか」が問われる時代に変わりつつあります。

顔出しゼロでも“選ばれる”ための5つの原則

  • 誰かのリアルな困りごとに寄り添うこと
  • 専門用語は解説付きで、誰でも読める文章にすること
  • 検索されるテーマを選び、記事を積み重ねること
  • 顔ではなく、実例と構成で信頼をつくること
  • 派手さより、“地味な継続”を大事にすること

おわりに:信頼は“顔”ではなく“言葉”から始まる

この司法書士の取り組みは、士業にとって大きなヒントを投げかけてくれます。

「自分には発信する力なんてない」と思っていても、「体験」や「知識」を整理し、相手目線で伝えることで、無名でも、顔出しをしなくても、確実に“届く”情報発信は可能なのです。

もしかすると、それは「顔を出すこと」よりもずっと強力で、長く残る武器になるのかもしれません。