行政書士こそストーリーテリング!「人生を変えた申請事例」を描け

「たかが申請、されど申請」。

一枚の書類が、ある人の人生を大きく変えることがある——そう実感しているのは、他でもない行政書士の皆さんではないでしょうか。

許認可、ビザ申請、相続、契約書作成…。扱う分野は幅広く、内容も煩雑。その中で、依頼者の“人生の転機”に立ち会ってきたという経験は、数え切れないはずです。

けれど、ホームページやプロフィール、パンフレットにはそれがうまく表現されていない。
結果、何をしている人かは分かっても、「なぜこの人に頼みたいのか」が伝わらない。

実はそれ、“ストーリーテリング”が不足しているのかもしれません。

このブログでは、なぜ行政書士こそ「ストーリー」で語るべきなのか。そして、どのような視点でそのストーリーを組み立てれば、依頼に繋がる“共感”を呼び込めるのか。その理由と技術を掘り下げていきます。

なぜ“事例”ではなく“ストーリー”が必要なのか

行政書士事務所のホームページでよく見かけるのが、「申請事例一覧」や「対応可能な業務」のリスト。

もちろんこれは悪くありません。ですが、それだけでは依頼者の心は動かないのです。
なぜなら、「あなたが何をしてきたか」ではなく、「自分がどんな未来を得られるか」を、ユーザーは探しているから。

たとえば、ただこう書かれていたとします。

「建設業許可の申請を代行しました。」

……ふーん、という反応で終わってしまうかもしれません。

でも、もしこんなストーリーだったら?

「20年間、個人事業として現場を切り盛りしてきた大工のSさん。『元請けの仕事を受けたい』という夢のために、初めて許可申請に挑戦しました。時間も知識も余裕がない中、私たちは彼の“職人としての人生の節目”を支援しました。そして、ついに建設業許可が下りた日。電話越しに聞こえた『これで人に頭を下げずに済む』という言葉が、忘れられません。」

これが“ストーリー”です。

読む人が「他人の話」ではなく「自分にも起こることかもしれない」と感じる。
感情が動き、行動が起こる。それが、ストーリーテリングの力です。

「人生が変わった瞬間」を描け

士業という職業は、冷静で論理的な印象を持たれがちです。
しかし実際の現場では、依頼者の不安、焦り、悩み…人間らしい感情のぶつかり合いが日常のように存在しています。

行政書士にとっての“日常”は、依頼者にとっての“人生の岐路”。
この視点を持つだけで、事例の語り方はガラッと変わります。

【ビフォーとアフターを描く】

たとえば在留資格の申請。
外国人の方が日本で生活し、働き、家族を支えるための「ビザ取得」は、単なる手続きではありません。

「技能実習からの在留資格変更が認められ、フィリピンから来たMさんは日本企業に正社員として就職。実家への仕送りが安定し、母国の弟も学校へ通えるようになったそうです。」

このように、「その後の生活」が垣間見えることで、依頼者の想像は一気に“自分ごと”になります。

単なる許可の取得が、人生の可能性を拡張する。
この「変化」を描くことが、感情に届くストーリーテリングの核です。

士業のホームページに「涙」は必要か?

少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、「はい」と答えます。

もちろん、感動ポルノのような演出をしろというわけではありません。

あくまで、人間らしさを忘れない描写を大切にしてほしいということです。

依頼者は、どこかで「共感できる誰か」を探しています。
その誰かに、自分を重ね、同じように助けてもらえるのではという希望を託すのです。

士業のホームページが、「業務内容の羅列」だけで終わってしまうと、感情の入る余地がありません。

その点、感情が描かれたストーリーは、人を惹きつけます。

苦しんだ背景、葛藤、壁を乗り越えた過程、そして新しい一歩。

これらはすべて、他の誰かの勇気になります。

ストーリーは“自分を売り込む”ツールではない

よくある誤解が、「ストーリー=自己アピール」と捉えてしまうこと。

実は逆です。

良いストーリーとは、「自分が主役」ではなく、「依頼者が主役」である構成になっています。

行政書士は、いわば舞台裏の存在。依頼者という主人公が、困難を乗り越える物語を描く中で、そっと背中を押す存在です。

その関係性が伝わることで、「ああ、この人は“私の話を聞いてくれそうだ”」と信頼感が生まれます。

売り込むのではなく、寄り添う。
それこそが、行政書士にとっての最も自然なストーリー構成なのです。

実際に使える!ストーリー構成テンプレート

「どうやって書けばいいか分からない」という方向けに、以下のテンプレートをご紹介します。

  • ① 登場人物の紹介
    誰が、どんな背景を持って登場するのか。
  • ② 問題発生
    何が壁となり、なぜ専門家の力が必要だったのか。
  • ③ 解決への道のり
    どのようなアプローチで解決に向かったのか。苦労や工夫も描写。
  • ④ 結果と変化
    手続きの成功だけでなく、その後どうなったのか。気持ちや環境の変化など。
  • ⑤ 行政書士の視点からの一言
    依頼者を通じて感じたこと、学んだこと。あくまで控えめに。

このテンプレートに沿って書くことで、「物語性のある実績紹介」が自然に仕上がります。

文章に慣れていない方へ|“話し言葉”をベースにする

文章に苦手意識がある方もいるかもしれません。

その場合は、「実際に誰かに話しているつもり」で一度話し言葉で書いてみることをおすすめします。

会話には感情が入りやすく、読み手にも伝わりやすい。
書き言葉に変換するのはその後で構いません。

ストーリーテリングがもたらす副次効果

実は、ストーリーで語ることには依頼者との関係構築以外にも様々なメリットがあります。

SEO効果

物語性のある長文記事は、ユーザーの滞在時間を延ばし、Googleの評価対象になります。
「行政書士 ビザ 申請 感動」「建設業許可 苦労 話」など、ロングテールキーワードにも強くなります。

SNSとの親和性

ストーリーは、SNSでシェアされやすいという特性を持ちます。
実体験ベースのエピソードは、思わぬ拡散力を生む可能性も。

他士業との差別化

他士業のホームページが“サービス内容の説明”止まりなのに対し、ストーリーを語れる行政書士は、人間としての魅力が際立ちます。
特に初対面での信頼構築が難しい業種において、これは非常に有利です。

最後に|あなたの経験は“誰かの希望”になる

行政書士が関わる書類の一つひとつは、ただの紙ではありません。

その裏には、人の夢、生活、再出発、再生がある。

だからこそ、そのプロセスをただの“業務報告”で終わらせず、人の心に届くストーリーとして語ることに意味があります。

あなたが見届けた「人生の転機」は、誰かが“次の一歩”を踏み出す力になるかもしれません。

物語の語り手としての視点。
それは、これからの時代の行政書士にとって、何よりも強い武器となるでしょう。