「いい感じにしてください」が通じる人と通じない人

はじめに

ホームページ制作を依頼する場面で、つい口にしてしまうフレーズに「いい感じにしてください」という言葉があります。

この一見シンプルで便利な依頼文句は、受け手によっては非常に的確に伝わる一方で、まったく意味が通じないこともあります。この記事では、この「いい感じにしてください」が通じる人と通じない人の違いを掘り下げながら、ホームページ制作において失敗しないコミュニケーションのコツについて詳しく解説していきます。

「いい感じにしてください」とは何か?

「いい感じ」とは極めて主観的な表現です。人によって「いい感じ」の定義は異なり、時には正反対になることさえあります。

たとえば、

  • スタイリッシュでクールなデザインが「いい感じ」だと感じる人
  • 親しみやすくカジュアルなデザインが「いい感じ」だと感じる人
  • 昔ながらの安心感があるレトロなデザインが「いい感じ」だと感じる人

同じ「いい感じ」でもその中身は千差万別です。では、なぜこの言葉が使われるのでしょうか?

なぜ「いい感じにしてください」と言ってしまうのか

  • 自分の好みを言語化できない
    「自分の中にはイメージがあるけど、どう表現していいかわからない」というケース。
  • プロに任せたほうが良いと思っている
    「プロなんだから、適当にうまくやってくれるだろう」と信頼して投げてしまうケース。
  • 面倒だからざっくり伝える
    打ち合わせ時間の短縮や、やりとりが面倒だと感じて省略してしまうケース。

しかし、この「いい感じ」という言葉がうまく伝わるかどうかには、大きな違いがあります。

通じる相手と通じない相手の違い

通じる相手の特徴

  • あなたの業界や目的を深く理解している
    単なるデザイナーやエンジニアではなく、ビジネスやブランディング、マーケティング視点を持っている。
  • コミュニケーションに長けている
    曖昧な言葉から意図を読み取る力があり、対話の中でヒアリングを通じて形にしてくれる。
  • 類似事例やトレンドへの理解がある
    「たとえば、こんなサイトですか?」と参考例を出しながら、方向性をすり合わせることができる。

通じない相手の特徴

  • 指示通りにしか動けない
    マニュアルや仕様書がないと動けないタイプ。融通が利かない。
  • デザインの方向性に意見を持たない
    「言われた通りに作る」ことは得意でも、自ら提案する力がない。
  • 業界や用途に対する理解が浅い
    ホームページの目的(集客なのか、信頼性の確保なのか、採用なのか)を理解せずに、単にページを作るだけの人。

「いい感じ」を共有するために必要なこと

  • 1. 参考サイトの提示
    「このサイトの雰囲気が好き」「この配色がいい」など、具体的なURLや画像を見せることは、最も確実な方法です。
  • 2. 好みの言語化
    「シンプル」「高級感」「親しみやすさ」など、抽象的でも方向性を示すキーワードを複数出してみましょう。
  • 3. NGな要素を伝える
    「この色は嫌い」「このフォントは古臭く見える」など、避けたい方向性を伝えるのも非常に有効です。
  • 4. 競合他社との違いを明確にする
    自社が何を強みにしているのか、どう見せたいのか、ブランディング(≒印象づけ)の軸を伝えることが重要です。

「いい感じ」を形にできるかどうかは、実は相性の問題

どんなに優秀な制作会社やデザイナーでも、相性が悪ければ成果物は期待通りになりません。相性とは、

  • コミュニケーションのテンポ
  • 言語感覚の一致
  • 感性の近さ

など、目に見えない要素の集合体です。

一発で「そうそう!こういうの!」と伝わる相手と出会えるかどうかは、運の部分もあります。ただし、その運を引き寄せる準備はできます。それが、自分の中の「いい感じ」を言語化しておくことです。

デザイナーとの良い関係を築くためのヒント

  • コミュニケーションを面倒がらない
    「プロなんだから分かるでしょ」は危険な思い込み。対話を通じて、方向性を一緒に固めていく姿勢が重要です。
  • “完成”の定義を共有する
    自分がどんな状態になったら「完成」と感じるのかをあらかじめ伝えておくと、ゴールの認識ズレが起こりにくいです。
  • 目的を伝える
    見た目の美しさ以上に、何を目的としてホームページを作るのか(集客、問い合わせ、ブランド価値向上など)を明確にしましょう。

「おまかせ」は最強の依頼ではない

「全部おまかせ」は一見、相手に自由を与える最上の依頼に思えるかもしれませんが、実は最も危険です。なぜなら、「おまかせ」でうまくいくのは、以下の2つの条件が揃ったときだけだからです。

  • 依頼主と制作者のセンスが一致している
  • 制作者が目的やターゲットを的確に把握できている

このどちらかでも欠けていると、「何となく違う」「思っていたのと違う」という結果になります。

まとめ:良い制作物は、良いコミュニケーションから生まれる

ホームページ制作は、モノづくりであると同時に、人との対話の積み重ねです。

「いい感じにしてください」という言葉を使うこと自体は悪くありません。しかし、それが通じる相手なのか、通じない相手なのかを見極め、通じるように準備をしていくことが、納得のいくホームページを手に入れるための鍵になります。

最終的には、「言葉で伝えることを面倒がらないこと」そして「自分の好みや目的に責任を持つこと」が、ホームページ制作を成功させる最大のポイントです。