リニューアルして売上が落ちた会社の原因分析
はじめに
企業や個人事業主の方にとって、ホームページは「デジタルの顔」とも言える重要な資産です。
そのホームページを新しく「リニューアル」することは、ブランドの刷新や新規顧客の獲得を狙う上で大変有効な手段です。
しかし、一方でリニューアル直後にアクセス数や売上が落ちてしまい、頭を抱えるケースが多々見受けられます。
なぜリニューアルしたのに、むしろ売上が落ちてしまうのでしょうか?
その原因は決して単純ではなく、多角的に検証しなければ見えてきません。
本稿では、中小企業や個人事業主、フリーランスの方がホームページリニューアルの際に陥りやすい「落とし穴」を分析し、具体的な解決のヒントを示します。
1. 売上が落ちるリニューアル後の典型的なパターン
リニューアル後に売上が落ちる主な理由は以下の5つに集約されます。
- アクセス数の減少(SEOの問題)
- ユーザビリティの低下(使いにくさ)
- ブランドイメージやメッセージのズレ
- ターゲットと目的の不整合
- 効果測定・PDCA(計画・実行・評価・改善)の欠如
これらは単独で起こることもあれば、複数が連動して深刻な影響を及ぼすこともあります。
リニューアルの全体戦略を理解しないまま表面的なデザイン変更やシステム刷新だけに注力すると、失敗するリスクが高まります。
2. アクセス数の減少とSEOの落とし穴
2-1. SEOとは何か? なぜ重要か?
まず、「SEO(Search Engine Optimization)」について説明します。
SEOとは「検索エンジン最適化」のことで、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果で自社サイトが上位に表示されるように工夫することを指します。
検索結果の上位に表示されることで、より多くの訪問者がサイトに来てくれます。
リニューアル後にアクセスが激減する最も多い原因が、このSEO対策の失敗です。
2-2. リニューアルで起こりがちなSEOのミス
URL構造の変更
旧サイトで評価されていたページのURL(アドレス)を変更すると、検索エンジンは新URLを新しいページとして扱います。
そのため、元々蓄積していた「検索順位の評価ポイント」がリセットされ、順位が大幅に下がることがあります。
対策例:
旧URLから新URLへリダイレクト(転送)を正しく設定し、検索エンジンにページ移動を伝えることが必須です。
これにより、元のページの評価を新しいURLに引き継げます。
重要コンテンツの削除や軽視
例えば「会社概要」「サービス詳細」「お客様の声」など、検索エンジンから高評価を受けていた情報を減らしたり、薄くしたりすると、評価が下がります。
内部リンクの断絶
サイト内で関連ページ同士を結ぶリンクはSEOにおいても重要です。
リニューアルでリンク構造が変わり、内部リンクが不足すると、検索エンジンが重要ページを把握しづらくなります。
画像や動画の最適化不足
画像に適切な「代替テキスト(alt属性)」を付けていないと、検索エンジンが内容を理解しづらくなります。
モバイル対応の不備
スマホからのアクセスが約7割を占める現在、モバイルフレンドリーでないサイトは検索順位が大きく下がる可能性があります。
2-3. Googleアルゴリズムの影響
Googleはユーザーに役立つ情報を届けるため、定期的に検索順位の決定方法(アルゴリズム)をアップデートしています。
リニューアルを機に最新のSEOトレンドを取り入れていないと、思わぬ順位変動を招くことがあります。
代表的なアップデート例:
- コアアップデート(サイト全体の品質評価の見直し)
- モバイルファーストインデックス(モバイル版の内容を優先評価)
- ページエクスペリエンスアップデート(表示速度や安全性などユーザー体験の重視)
これらの変化に対応していないサイトは、検索順位が大きく下がるリスクがあります。
3. ユーザビリティ(使いやすさ)の低下
3-1. ナビゲーションの混乱
リニューアルでデザインやページ構成を大幅に変えると、ユーザーが「どこに何があるのか分からない」状態になることがあります。
特に、トップページから「商品一覧」や「問い合わせ」など重要なページへの導線が分かりにくいと、訪問者は目的を達成できずに離脱してしまいます。
3-2. 表示速度の低下
サイトの表示速度は、ユーザー体験とSEOに直結します。
画像のサイズを大きくしすぎたり、不要なプログラムを増やしたりするとページ表示が遅くなり、ユーザーが離れてしまう原因に。
数値の目安:
表示速度は3秒以内にページが表示されることが望ましいとされています。
3-3. レスポンシブ対応の不備
パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなど様々な画面サイズに対応できているかは必須条件です。
レスポンシブ対応が不十分な場合、画面が崩れたり操作が難しくなり、訪問者が離脱しやすくなります。
4. ブランドイメージとメッセージのズレ
4-1. イメージチェンジの失敗
企業のホームページはブランドイメージを伝える重要なツールです。
大幅にイメージを変えすぎると、既存の顧客やリピーターが違和感を持ち、離れてしまうことがあります。
例えば、暖かみのある親しみやすい印象だったのに、急に冷たくスタイリッシュな印象のサイトに変わると、一部の顧客は「昔の方が良かった」と感じることがあります。
4-2. ターゲット層の誤認
リニューアルにあたって、誰に向けて作るのか(ターゲット層)を正しく理解しないまま進めると、メッセージやデザインがズレます。
その結果、訪問者が自分向けの情報ではないと感じてしまい、コンバージョン率(購入や問い合わせの割合)が下がります。
5. ターゲットと目的の不整合
ホームページは「誰に」「何を」「どのように」伝えるかが最重要です。
リニューアル前に設定した目的やターゲットを再確認せずにデザインや構成を変更すると、本来の目的を果たせないサイトになります。
例:BtoBの法人顧客向けなのに、BtoC向けの華やかなデザインに変えてしまうなど。
6. 効果測定とPDCAの欠如
リニューアルは「完成」ではなく「スタート」です。
どの施策が効果的だったのかをデータで確認し、改善を続けることが不可欠です。
しかし、多くの企業がリニューアル後に効果測定を行わず、問題点を放置してしまいます。
これにより、売上減少の原因を特定できずに長期化することがあります。
7. まとめと対策のポイント
- リニューアルは「SEOの維持・強化」を最優先に計画する。
- URLの変更は避けるか、リダイレクト設定を正確に行う。
- 既存の重要コンテンツは残し、ユーザー導線を明確にする。
- モバイル対応や表示速度をチェックする。
- ターゲット層を明確にし、それに合わせたデザインとメッセージを作る。
- リニューアル後もアクセス解析やコンバージョンデータをもとに改善を繰り返す。
ホームページリニューアルは難易度が高い作業ですが、専門家の意見を取り入れ、計画的に進めることで成功率は大きく上がります。
ぜひ、本記事を参考に慎重かつ積極的にリニューアルを検討してください。