曖昧な表現が“詐欺っぽく”見える心理とは
はじめに
「なんとなく怪しい」「うさんくさい」「詐欺っぽい」――これは、私たちがあるホームページや広告を目にしたときに、ふと抱く感情の代表格です。しかも、それが具体的な根拠があるわけではない場合も多い。それなのに、なぜか心が警戒モードに入ってしまう。この記事では、そうした“曖昧な表現”がなぜ人に不信感を与え、詐欺っぽく見えるのかを、心理学や言語表現、ウェブデザインの観点から深掘りしていきます。
これはホームページ制作のプロ向けの記事ではありません。ホームページの依頼を検討している中小企業の経営者、個人事業主、フリーランスの方に向けた読み物として書いています。専門用語には丁寧な解説を添えていますので、初めての方もご安心ください。
曖昧な表現とは何か?
まずは「曖昧な表現」とはどんなものかを考えてみましょう。
典型的な曖昧表現の例
- 「業界最安級!」
- 「〇〇も満足!」
- 「今だけ特別価格」
- 「多数の実績あり」
- 「※個人の感想です」
これらの表現は、一見するとお得感や信頼感を醸し出しているように見えますが、よく読むと実体がつかめません。
たとえば「業界最安級!」とありますが、“級”とは何を指すのでしょうか?最安値なのか、2番目なのか、それとももっと上?「多数の実績」と言っても、“多数”が何件を指すのか、明確ではありません。
なぜ曖昧な表現が怪しく感じられるのか?
このような曖昧な表現に対し、なぜ人は「怪しい」「詐欺っぽい」と感じるのでしょうか?そこには、いくつかの心理的メカニズムが関係しています。
1. 認知的不協和
人は、「理解できないもの」や「矛盾を含むもの」に対して不快感を覚える傾向があります。これを認知的不協和(にんちてきふきょうわ)と呼びます。たとえば、「業界最安級」という表現は、安いようで安さの基準がわかりません。この曖昧さが、私たちの脳内に矛盾を生じさせ、「なんかモヤモヤする=信じられない」という感覚を引き起こします。
2. ヒューリスティック(直感的判断)
人はすべての情報を論理的に精査して判断しているわけではありません。多くの場合、ヒューリスティック(heuristic)と呼ばれる“直感的判断法”を用いています。怪しい表現や曖昧な言葉を目にすると、脳が過去の経験や学習から「これは詐欺だったかもしれない」という記憶と結びつけ、「危険」と判断するのです。
3. 情報の非対称性への警戒
消費者(=ホームページを見る側)は、提供者(=ホームページを作った側)よりも情報が少ない状態にあります。この状態を情報の非対称性といいます。このような状況では、人は“自分が知らないこと”に対して警戒します。曖昧な言葉が増えるほど、「何かを隠しているのでは?」という疑念が強まります。
曖昧な表現のリスクとは?
信頼を失う第一歩
ホームページにおける「信頼」は、デザインや文章のトーン、構成など複数の要素で構築されますが、その中でも言葉の力は極めて大きいです。仮に見た目がいくら綺麗でも、言葉が曖昧だと「この会社は本当に大丈夫なのか?」という印象を与えてしまいかねません。
コンバージョン率の低下
コンバージョン率とは、ホームページを訪れた人のうち、問い合わせや購入などの“行動”に至った人の割合のことを指します。曖昧な言葉が多いページは、ユーザーが信頼できず、結果的に「離脱」(そのページを閉じる)してしまう確率が高くなります。
曖昧な表現を避ける具体的な方法
1. 数字で具体化する
❌「多数の実績があります」
✅「これまでに123社の導入実績があります」
数字が入るだけで、具体性が増し、信頼性も一気に上がります。
2. 主観ではなく客観的に伝える
❌「高品質の商品です」
✅「第三者機関の品質検査に合格した商品です」
「高品質」とは、主観的な言い回しです。それを裏付ける根拠があると、言葉の信ぴょう性が格段にアップします。
3. 「お客様の声」を構造的に使う
「お客様の声」もただ掲載するだけではなく、背景や利用シーン、成果などを交えて構造的に見せると信頼につながります。
❌「〇〇さん:とても満足しています!」
✅「〇〇さん(東京都・建築業):“発注から納品まで1週間で完了し、クライアントにもすぐに提供できて助かりました”」
「あえて曖昧にしている」表現にも注意
一方で、マーケティングの現場では「曖昧な表現をあえて使う」ことがあります。たとえば、「今だけ」や「限定」などの言葉は、人の「損をしたくない」という心理(損失回避の心理)を刺激するために効果的です。
ただし、これもやりすぎると逆効果。特に、実際には限定でも何でもないのに「数量限定!」とするのは、不信感のもとになります。現代の消費者は賢くなっており、曖昧な煽りには敏感です。
曖昧な表現を見抜く力を持つことの価値
ホームページ制作を依頼する立場として、こうした「曖昧な表現」を自分で見抜く力を持っておくことは、とても大切です。
- 制作会社が作る文言が、曖昧でないか?
- キャッチコピーが、誤解を招くような表現になっていないか?
- “なんとなく”怪しい言葉が、自社の信頼性を下げるリスクになっていないか?
これらに気を配ることで、より本質的な、長く機能するホームページを手に入れることができます。
まとめ:言葉の信頼が、すべての信頼を支える
曖昧な表現は、意図的であれ無意識であれ、見た人に不信感を与えるリスクがあります。特にホームページのように「顔の見えない」コミュニケーションにおいては、言葉そのものが信頼を左右します。
今後ホームページを制作・依頼する方は、ぜひ「どのような言葉が使われているか?」という視点を持ってページを見てみてください。その“違和感”こそが、あなたのビジネスの信頼性を守る大切なセンサーになるはずです。